No. ステロイドの光明面と暗黒面
【ステロイド!】
なんだか凄く強力な呪文のような語感がありますが、この「ステロイド」に対してどのような印象をお持ちですか?
副作用が強い、怖い薬、重症時にしか使わないつよーい薬、いっぱい飲むと大変なことになる、体に良くない、悪い薬、ドーピング・・・・
webやSNSの情報社会、調べれば調べるほど怖くなることばかりですよね。
確かにステロイド剤は強力な薬として有名ですが、同時に副作用についても有名です。
「ステロイドと聞くとやっぱり副作用が心配。」
飼い主様はこのような反応をされることが非常に多いです。
その一方でその副作用は具体的にはどのようなものがあるのか?
これをご存知な方は少ないのではないでしょうか。
まず、人間・動物共通の認識としてステロイドは
長期にわたって/高用量で/強度ランクの高いもの
を使用すると副作用のリスクが高まります。
具体的な副作用としては免疫抑制、多飲多尿、多食、肝障害、胃腸障害、
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)、皮膚が薄くなる、筋肉・靭帯の萎縮、
創傷治癒の遅延、神経障害、高脂血症など多岐にわたります。
ここまで聞くと不安がさらに増してしまった方もいるかもしれません。
しかしながらステロイドは特に皮膚科治療においては欠かせない薬の一つであり、
使い方次第で、非常に優秀な薬なのです。
皮膚においてはざっくりいうと
「即効で痒みを止めて炎症を抑える」
というのが主な効能です。
かつては他にあまり薬が多くなく、皮膚の痒みときたらステロイドくらいしかなかったので
すが、近年では副作用も少なくステロイドと同等の効果を持つような薬もでてきており、
ステロイドの使用頻度も少し減ってはいますが、ここぞと言う時に力を借りることがあ
ります。慢性化した皮膚の構造変化や強い炎症による赤み/痒みにはステロイドを使わないと
対処できない事もあるのが事実です。
数ヶ月〜数年単位で同じ部分にステロイドの塗り薬を塗り続けると・・・
上の写真のように塗り続けたところだけ皮膚の異変が起きます。いわゆるステロイド皮膚症
という状態で、皮膚の菲薄化、面皰、血管が拡張し浮かび上がって見える、縦しわが入るな
どの変化を認めます。
最初はすぐに治るので、症状が出るたびに塗ったりよく効く薬と思ってたくさん塗ってしまったりを繰り返してしまうとこのようになってしまいます。こうならないようにする為にはステロイド剤を処方する我々獣医師がきちんと説明をしないといけないと思っています。
ここでステロイド剤について飼い主様にも知っておいていただきたい事をまとめます。
1.正しい用量で
2.正しい間隔で
3.だらだら続けない
4.服用中は副作用チェック(お家での様子、血液検査など)
5.勝手にやめたり増やしたりしない
6.不安になったら獣医師に相談
これらを守ることで副作用や有害事象は防ぎつつ、有効性を得やすくなります。
スターウォーズのジェダイとシスのように、フォースのように、
ステロイドの効果には光明面(ライトサイド)と暗黒面(ダークサイド)が存在します。
上手く使えば、とても良い薬ですが使い方を間違うと有害になってしまう薬です。
ただただ悪いものではありません。という事をご理解いただきたいです。
オアシス動物病院ではステロイド剤の処方時には飼い主様がご理解いただけるまできちんと
説明をさせていただきますので、不安や分からないことは何なりとお尋ねください。
文責:獣医師 赤司和昭