No. 犬のカビ?猫のカビ?ってなんだ?
電話が鳴り響くオアシス動物病院内にて・・・・
ガチャ。(電話を置く音)
鍋山:赤司先生、初診のワンちゃんの患者様からの予約の電話だったのですが、他院にてカ
ビと言われたということでした。
赤司:うーん、「カビ」ねぇ。。。とりあえず診てみないとどんな「カビ」か分からないなあ。ところで鍋山先生は飼い主さんから「カビ」と聞いて何の病気を思い浮かべる?
鍋山:えーっと・・・まず皮膚糸状菌、とそれからマラセチアですかね。
赤司:そうだねー、それらを思い浮かべるのは間違ってないと思う。
ただ皮膚糸状菌とマラセチアって全くの別物だし、カビでまとめられない疾患だと思うんだ。
「真菌」とか「皮膚糸状菌」とかでは難しくて伝わりにくいから語感の伝わりやすさから
も「カビ」と説明されるケースもあるかもしれない。
一般的に「カビ」っていうとお風呂とかに生えてうわー!カビキラーで掃除しなきゃ!ってなるあの「カビ」を想像するよね。教科書やwikipediaによると、「カビ」は漢字で書くと「黴」、菌糸からなる体をもつ菌類であり食品などの上で増えて目に見えるもののことを指し、真菌はカビ、酵母、きのこなどの総称であるとの記載があります。つまりカビは真菌の一種ということになるね。
鍋山:え!では厳密にはマラセチアはカビではない。ということですか・・・?
赤司:そういうことです。その辺が分かった上で飼い主さんにより伝えやすくするために「カビ」という言葉で説明することはあるのかもしれないけど、マラセチアは酵母様真菌なので言い換えるなら「酵母」と言うと良いね。一方で皮膚糸状菌の場合は「カビ」と呼んで間違いはないかもしれない。
それから、簡単にこの二つの疾患をきちんと区別しなければならない理由がもう一つ!何だと思う?
鍋山:皮膚糸状菌症は他の動物や人にも移るから・・・ですか?
赤司:御名答!皮膚糸状菌症はれっきとした人獣共通感染症です。人も移る可能性があるのと、特に猫(子猫や老齢猫でリスク大)での感染が成立することが多いので同居猫がいる場合は要注意。
一方で、マラセチアは常在真菌なのでその動物側の問題で増殖するかどうかが決まります。個体から個体へで移ってしまう感染症では無い。
とこんな感じの違いがあるね。
鍋山:皮膚糸状菌とマラセチアはぜんっぜん違うものなんですね!!
赤司:そうだよ!だからカビという言葉で一括りにはできないし、そもそもマラセチアはカビではない!ということですね。
鍋山:飼い主さんに説明する時は分かりやすく説明するのは大事ですが、間違った言葉を使って診断名をお伝えすると飼い主さんも周りの人も混乱をさせてしまうかもしれませんね!肝に銘じておきます!
赤司:そこんとこよろしくー!ちなみに、皮膚糸状菌は猫と相性が良いので犬よりも猫で多く、マラセチアは犬の方が圧倒的に多く見られるね。
要は動物病院で、犬でカビと言われたらマラセチア(本当はカビではなくて酵母)かも?猫でカビと言われたら皮膚糸状菌症かも?
ではまとめておきましょう!
☞真菌は酵母(マラセチアなど)・糸状菌(いわゆるカビ)・キノコの総称
☞正しくはカビ→糸状菌、酵母→マラセチア。マラセチアはカビではない。
☞伝わりやすくするために犬のマラセチア皮膚炎や猫の皮膚糸状菌症を「カビ」と表現する
先生もいる。